フリーズドライを始めた瞬間、装置はこうなる–>

この画面は真空凍結乾燥機の起動時のモニター画面です。真空引きを始めると、一番右列のVACUUMの数値が徐々に下がっていきます。これはパスカル(Pa)の単位で表示されています。最大値の表示が1000Paなので、そこから徐々に下がっているのがわかるかと思います。横の行は1分ごとの記録です。1分ごとの記録で、一段ずつ下がっています。

真空が進んでいくに連れて、Cold Trap温度が徐々に上がっていきます。これは、試料から氷の昇華が始まり、これがコールドトラップについていくため、凝集熱が発生し、温度が少々上がります。このときが冷凍機が一番頑張っているときです。付加がないときは-47.5℃でしたが、氷が付着していくとどんどん温度が上がっていき、-38.7℃まで一時的に上がっています。水分が試料からどんどん昇華して行くと、蒸発するので試料の熱は氷の昇華熱で奪われ、どんどん冷えて行きます。アルコールを手に塗ると蒸発していくと涼しく感じますよね。まさに同じ現象が試料中で起きています。Materialの温度は試料中に差し込んだ温度プローブの温度を示しています。また、Shelf1,Self2は試料を載せている棚温度を示しており、試料の温度(Material)が下がっていくと、試料を置いている棚の温度もそれにつられて下がっていきます。

真空引きを始めた瞬間、このような現象がフリーズドライ装置の中で起きています。ここから真空はどんどん高まって行きます。

フリーうドライ装置の起動時のモニター画面

数分すると、下の画面のようにCold Trapの温度も戻ってきます。負荷が少なくなってきたからです。昇華が少しスローになってきたからです。棚温度はヒーターによってこの時、−30℃付近にコントロールサれています。加温しないとどんどん温度が下がっていき、コールドトラップと同じ温度となり、昇華がストップします。棚の温度をコールドトラップより少し上げると、昇華が進んでくれます。これを上げすぎると昇華が激しくなり、コールドトラップの能力を超えてしまったりします。そうなると、水分は真空ポンプの方にも移行していき、ポンプの負荷を高めます。オイル回転式真空ポンプの場合、オイルの劣化、白濁を早めます。オイル交換頻度を短くしてしまいます。

フリーズドライ装置のモニター画面_CDSH400
フリーズドライ装置のモニター画面_CDSH400

一方、試料の温度を急に上げると、仕上がりも荒くなります。イチゴならば表面にシワが寄ったりします。海外製の安いフリーズドライイチゴは、結構しわしわな製品が見受けられます。良質のフリーズドライは時間がかかりますが、品質が高い乾燥品ができあがります。品質が高いとは、乾燥品の見た目が、元の形状に近いものということです。また、エビなどは、お湯で戻した後の形が、新鮮なものに近く戻ります。早く乾燥したい→棚の温度を早く上げる→乾燥は早くなるが見た目やお湯戻し後の形が悪くなる。

商売は時間やコストとの戦い。2倍時間をかけたら装置の減価償却にも2倍の時間がかかることになりますよね?バランスが重要です。

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